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『百円の恋』公開記念~伝説の映画俳優・松田優作の軌跡松田美由紀(女優)×武正晴(監督)×新井浩文(俳優)上映初日トークショー再録

東京国際映画祭での記念すべき『百円の恋』初上映を控えた10月25日(土)。テアトル新宿では松田優作さんの出演作をアーカイブした特集上映が幕を開けました。『百円の恋』は周南映画祭で同作品の脚本が「第1回松田優作賞」のグランプリに選出された事がきっかけとなって、世の中に出る運びとなりました。この日、そのグランプリ選出に関わった松田美由紀さん、『百円の恋』武正晴監督&出演の新井浩文さんによるトークショーが実現。ここに再録させて頂きます!

武 今、劇場内で松田優作のデビュー作『狼の紋章』を観てました。何て台詞で最初登場するのかなっていうのを観たくて観てたら「やめろ。」でした(笑)

一同(笑)

新井 それにしても美由紀さんとこうして喋るの初めてだからすごい緊張するんだけど(笑)

松田 もう新井君がすごくちっちゃい時から知ってる。

新井 はい。ご長男の松田龍平さんとは『青い春』っていう自分のデビュー作で共演させてもらって。終わった当時、龍平さんが実家の方に住んでて、泊まりに行ったんですよ。当然美由紀さんが居て、挨拶のタイミングいつしようかなってそわそわしてたら、龍平ちょっと来いっていなくなっちゃって。「あれ、これ空気おかしいな」って思ったら親子喧嘩が始まったんですよ。

一同 (笑)

新井 すごいびっくりして、その時挨拶できなかったんですよ。これやばいなあ、どうしようと思って。それで龍平の部屋に布団があんまりなくて寒いなと思ってたら、美由紀さんがこれ使いなさいってかけに来てくれて。その時にすごい優しいって思って。

松田 すごい気まずい。いきなり家庭の方を垣間見られた(笑)

武 ファミリーみたいですね。

新井 本当に。正月とかも大体真っ先にお邪魔して過ごしてるんですよ。だからそれだけすごい密な関係でお世話になってるからこうやって喋って感慨深いというか緊張しますね。優作さんには会ったことがないんで、どっちかっていうと龍平とか翔太のお父さん。もちろん作品は観てますけど。まわりの密だった方々、それこそ原田芳雄さんからも色々なお話聞いて。やっぱり優作さんとか勝(新太郎)さんとか武勇伝すごいじゃないですか。嘘か本当かわかんないやつ。特に優作さんの場合はけっこう暴力的な武勇伝が多々あるじゃないですか。美由紀さん見たことあるんですか?、そういうの。

松田 もちろん、色々な物がずっとこう飛び交う感じとか(笑)俳優の中では喧嘩っ早いと言われた人なんで。本能的に「闘う」っていうことは、ある種それも男性的なコミュニケーションだと思うんですよ。『百円の恋』もそうですけど闘うことで生まれるコミュニケーションが、私はあると思っていて。今は学校の先生がお前いいかげんにしろってバシンって小突くのもお母さん達がみんなだめって言われちゃうような社会になってるんだけれど。

新井 感情って言葉で説明できない時あるじゃないですか、喜怒哀楽っていうことが。それを含めて表現だと思うんですけどね。わっと身体が動く時っていうのは言葉では説明しきれないことが出てくると思うんですけど。武さんも武闘派?

武 いや、僕は穏やかに毎日生きて行きたいと思ってるんですが。

新井 嘘だー。現場の時すごい叫んでたじゃないですか。「止めろー!殺すぞー!」って。

一同:笑

武 「殺す」なんて言ってませんよ!そうやって伝説って生まれていくんですね(笑)

松田 何かこう、世の中が優しい人がいいっていうふうになっていって、揉め事とか泣いたり叫んだり怒ったりするのも駄目みたいな空気がすごいあると思うんですけど。私はすごく怒れるとかすごく泣けるっていうのはすごく笑うのと実は同じなんじゃないかと思うんですよね。だからすごく怒ったり「なんでこうなんだよ」って自分の感情を吐き出すっていうのはすごくいいことだと思ってるんですよ。

新井 うちも仕事以外で、母親以外で、顔殴られたのは美由紀さんだけです。

一同 笑

武 またいい話が来ましたよ。

新井 本当にいまだに覚えてますけど。六人くらいで飲んでて、美由紀さんからの質問に答えたら「そんなこと言うんじゃない」って。いやいや聞いたのは美由紀さんですよって(笑)

松田 まあそうなんですよ、一度私も、未だかつて俳優さんを殴ったのは新井君しかないです(笑)

新井 嘘だ(笑)

松田 そうですよ。それで龍平とか翔太の友達殴ったなって思って。電話したんですよ、2人に。新井のこと殴ったんだけどどうしようって言ったら「いいんじゃない?」って言って(笑)

新井 すごい嫌だ、松田家(笑)本当に恐ろしいんですよ。

武 でも新井君は優しいもんね。役柄的にちょっと強い役が多いんですけど、本当に優しい人なんですよ、この人は。

新井 あと美由紀さんって今ご自分でもおっしゃってましたけど喜怒哀楽が激しいっていうかしっかり立つ人で、プラスむちゃぶりの名人なんですよ。何年前でしたっけ、それこそ優作さんの、パルコで展示会みたいなのあったんですよ。優作さんの台本とか衣装とか全部飾ってあって、最終日に龍平と二人で一緒に観に行ったんです。台本とかびっしり書いてあってすごいなあと思って。最終日だからちょっとした飲み会みたいなのやるって言って。安岡力也さんとかジョー山中さんとか、優作さんにまつわる人達、その中にうちと龍平がいて。ジョー
山中さんが『人間の証明』歌って、うわあすごい!ってなって拍手してパッと美由紀さん見たら「じゃあ次、新井。」え!ジョーさんの次、うち?っていう。

一同 笑

新井 せめて龍平じゃないの? どうしようと思って、でも言うのも嫌だから当たり障りのない歌なんだろ、尾崎豊だと思って入れようとしたら安岡力也さんが「俺、尾崎歌う奴嫌いなんだよ」何これ!って。

一同 笑

武 毎回新井さんは呼ばれてるわけですね。

松田 そうなんです、新井君はもう松田家の家族みたいなものなんです。

新井 嬉しいです。

松田 大体ね、お正月には必ず来ますからね。

新井 あ、それさっき言いましたからね。

一同 笑

松田 武監督はいつから松田優作っていう人を?

武 僕は優作さんがいらっしゃる時にセントラルアーツっていう所にいたんですけど、僕は優作さんに憧れて東京に来て、どこに行けば会えるんだろうと色々徘徊していた少年だったんです。事務所にいるといつか来るんじゃないかなって思ってはいたんですけど。お会いできなかったんですけど。僕はだから美由紀さんとは助監督の時に村川(透)組で一度ご一緒させてもらってます。

松田 そうですか!

武 だから僕は松田優作さんにはお会いできなかったけど、なんかちょっとお近づきなれた感じがしました、そこから始まったんですね。

松田 優作が亡くなったあとに、優作の友達とかすごかったですよ、熱狂的なファンっていうか。それで夜な夜な電話かかってくるんですよ、「今、優作さんの夢見ました。」とか。しょっちゅう色々な人から電話かかって来たりして「すみません私は優作じゃないので直接、私を通さなくても結構なんで直接交信してください」って言って(笑)一時期熱狂的な人、友達もそうでしたし、ファンの方も家の前でギター弾いてたり、家の中に入って来ちゃう人もいたりして、色々大変でしたね。それで優作はカリスマ的な物を持ってる人だったから。日活の撮影所で優作が歩くとモーゼの十戒みたいにスタッフが割れたとか。よくスタッフの方に教えてもらったりしましたけど。

武 何かみんな気にしてましたね、今どういうなんの撮影をしてるのかっていうので、明日だったら行けるんじゃないかとか。僕はそういうスタッフと一緒に育ててもらったので。優作がいたらなあって言いながらやってるスタッフと一緒にやるとものすごく熱かったですよね。

松田 だから念みたいなものっていうんですかね。映画を愛して作ってるみたいなものっていうのが、優作はすごくあったんですね。ものすごく緻密に役作りをして、すごくスタッフを大事にして、無駄のない、素晴らしい現場だったみたいで。でも私が優作から教わったことっていうのは、思いっていうのは画に出るんだなっていう。俳優が演じるっていうだけじゃなくてこの映画とどう関わろうかっていう念みたいなもの。例えばぱぱっと現場に来てセリフ言ってお疲れ様でしたって帰っていくことだってできるわけじゃないですか。でもその映画がとどれくらい緻密に関わって、どのくらい愛情があるかっていうことが、映像に映るんだなっていう。優作の世代のすごくいい俳優さんたくさん他にもいるのに、優作だけがこうやってもう一度劇場でかかるっていうのがすごく不思議だったんですね。それで、今でも優作は、優作さんでっていうお仕事のオファーもあったりするんです。亡くなってるのにそれだけオファー、ニーズがあるっていうのはすごい不思議なことだなって思ったんですね。それっていうのは、人の念っていうんですかね。何かに、そこに本気で佇もうとするエネルギーって、実はそういうこと超えて人に伝わるんじゃないかなっていうの本当にすごく感じてて、すごく不思議なんです。優作の映画観てても、優作だけが生きてて、他の役者が古くなってる場合があるんですよね。あれが不思議なんですよね。優作だけが画の中で古くないんですよ。他の役者さんが昔の映画だなっていうわかるような感じっていうですか。

武 優作さんがぶれないからじゃないですか、常に変わっていかない。説明のつかないものを残していく。だから映画を観たあとにちょっとこう何日間か残るものが、封切りの時も今日も感じました。

松田 『百円の恋』は山口の小さな小さな映画祭、商店街の片隅で行われるような周南映画祭のスタッフの方が情熱のある人で、どうしても映画祭で優作の脚本賞として募集したいんだっていう熱意を持って。セントラルアーツの黒澤満さんっていう優作を昔から知ってるプロデューサーが「規模じゃないんだ、人間なんだ」って言って、周南の熱意のあるスタッフに賭けようじゃないかって言って。規模じゃなくてその人に賭けたみたいなところあるんですね。それでこの熱意をどうにか形にしてあげたいっていう思いがあって、それで映画祭が行われて。そしたら151本の脚本が集まったんですね。本当にどこから情報得ているんだろうかっていう数が来て、その中から10本の作品を読ませてもらうことになったんですけど、それまではスタッフが151本全部読むっていう大変な作業だったんですね。その中から『百円の恋』が面白いってことになって。だからその映画に新井君が参加するっていうことが不思議で素敵だなって思って。

新井 うちも嬉しかったです。

武 そういう縁みたいなのありますよね。

新井 ちなみに最終選考したのは美由紀さんと黒澤満さん?

松田 あと丸山昇一さん。だから人の思いとか熱意っていうのは人を動かすしそういうことが希薄になってきてるんじゃないかって思うんですよね、今の世の中。熱い感情っていうのを表に出すのを恥ずかしがったり格好悪いって思われたり、そういうことで自分の思いを伝えるっていうことが、ね。だけど私はその上で普遍的で一番大事なものなんじゃないかなって思うんですね。それで『百円の恋』っていうのも念みたいなもの。

武 やっぱり優作さんのこと、読んだり聞いたりするととにかくシナリオにこだわった方で、シナリオ作りから丸山さんと一緒になって脚本からプロデューサーのように本を作らせて、それを俺が演じるんだっていう話を色々な方から聞いて。僕らもシナリオライターの足立君と喫茶店で二人でとにかくシナリオ作ろうと。企画書やプロットとかっていうことよりも、自分たちが観たいシナリオ一回作ってみようと。ただ女が闘う映画を作ってみたいんだっていうところから始まったんですけど。そこから4年かけてシナリオ作って、僕らは非常に満足のいくシナリオができたんですけど、なかなか世の中にどう持って行ったらいいかわからない。それであの時に松田優作賞っていう脚本賞、しかも第一回目で。この賞は相当何か熱意のある人達が集まっているのではないだろうかと思って、ある意味賭けでシナリオを出したらある日「三本のうちに残った」と。何とそこで審査員の方が美由紀さんであり丸山昇一さんであり黒澤満さんだってことが分かって、これは僕らにも近い人じゃないかっていう。そこから賞を頂いた時にやっぱりシナリオは映像化されないと何の意味もないので、何とか世に出したい。二人で始めたものが段々人が増えていき、そして安藤サクラさんや新井君がシナリオ読んでくれて。これはまた嬉しいことにシナリオ読んで、やるって言ってくれたので本当にありがたいなって思ってます。

松田 だけど『百円の恋』は本当に面白い作品でしたね。私は本当に嬉しくなっちゃって。

武 出てる俳優さん達が本当に頑張ってくれたんで。

新井 美由紀さん観終わった後すぐ電話くれて、ずっと「良かった」って言ってましたもんね。

松田 素晴らしかった。黒澤さんが「美由紀は大作でも全然褒めないのに、なんでこの小さな作品を」っていうくらい一番驚いてましたね。本当に面白かったですね、安藤サクラちゃんがまた。念ですよね。

武 念です。念であり、新井さんもそうだけども、俳優が役に向かっていくっていうかすごいもの見せてもらえたなっていう。今度はお客さんにどれくらい届くのかっていうことだと思うんですよね。

松田 ぜひみなさん、本当に観てほしい。これは松田優作の名前がついて、亡くなってから初めて作られた映画になったわけなんですけど、観てる間に途中からこみ上げてくる喜びっていうんですか。この映画が優作の名前がついてよかったなって思った映画だったんですね。だから名前がついてるのに内容が伴っていなかったらがっくりするじゃないですか。

武 松田優作賞という冠がついたからにはちょっと生半可なことじゃだめだろうなっていうのがあったんですけど、やはりスタッフやキャストも同じ思いでやってくれたっていうか。

松田 松田優作っていう人がなぜこうやって25年も経って多くの人に支持されてるってことは変わらない、本当に内側から湧き出る気持ちみたいなものなんじゃないかなって思うんですよね。それが色々なことでぶれてしまう世の中になっていってるけど。私なんか真ん中くらいの年齢にいい具合に生きることができて、すごく色々なものを見れているというか。勝新太郎さんとか上の世代の人達にも可愛がられてもらって、新井君みたいな素敵な人にも可愛がってもらって(笑)

新井 可愛がってはないです(笑)

松田 面白い時に、生きていれてよかったなって思うんですよね。でもそれを通して一貫してみても大昔から本気っていうキーワードっていうのは変わらないんだなって思いますね。

武 人が何か本気でやってる姿っていうのは感動しますし、美しいですから、どういう作品を観ても。シナリオ作って思ったのは俳優さんやスタッフが本気になるシナリオを作らないといいものは残せないなって今回思って、やっぱり次書く機会あれば同じ気持ちでやりたいなって思いますね。

松田 変な話ですけど、映画は宣伝とか俳優さんが前に出てやったりするわけですけど、俳優さんの中でもこれ出来悪かったなっていうのが実際は思ったりする場合だってあるわけなんですよ。自信持って宣伝したいなって場合もあるし、これ宣伝するのかってね。

武 よく言うんですけど俳優見たらわかるっていう、宣伝に対する熱意。それでこっちが本気だったらいい映画なんだろうなとは思うし、そうじゃなくて映画館でぜひみたいなお決まりのこと言ってたら、これつまんないんだろうなって。

一同 笑

松田 そういう思いが重なっていってお客さんが評価してくれて一個の映画っていうものが埋まるっていうもので。やっぱりひとつの映画に関わるっていうパワーっていうのはすごいなって。私がこの前カンヌ映画祭に行ってきて、『2つ目の窓』っていう映画に出たんですけど。フランスで実は100館以上映画館にかかってるんですね。そうやって日本の小さなところで作った映画が世界中の映画館でかけられるってことを『百円の恋』もそういう可能性がある映画だと思います。それもすごいことですよね。

武 ちょっとずつ広がっていく感じがね、まあやっぱり最初に僕らが思ってやろうと思ったことを忘れちゃいけないなっていう。ただ先輩達がやってる姿を見てね、もしくは優作さん達がやってたことに何か憧れるというか、優作さんの奇跡みたいなものを観た若い方達が何かこういうところに向かって行きたいとか、『百円の恋』を観てくれた方が何かこういうものを何か違う形でできるんじゃないかって思ってくれるだけでもいいと思うんですよね。

松田 でも普遍的なことからいうと優作はですね、実は『探偵物語』を知ってる方も多いと思うんですけど、あのトレンドの帽子とネクタイとスーツ。優作が「流行はいらない」と言って。作品っていうのはずっと語り継がれるんだって言って、所謂あのファッションの形を作ったんですね。私はその当時その話を実は聞いてるわけですよね、優作から。でもその時は何を言ってるのかわからなかったんですよ。映像は変わるものを着てはだめなんだっていう。それは映画じゃなくて流行としてひとつの雑誌のようなもので流れて行ってしまうって。それが25年経ってわかるっていう。

武 前作で『イン・ザ・ヒーロー』っていう作品を作ったんですが、最後にスタンドマン達のクレジット映像をね、本当のスタントのやってる映像を残したくて。『探偵物語』を全作観直したんですよ。ワンカット、ベスパで飛ぶカットを入れさせてもらったんですけど、その時に同じこと思いました。スタンダードって普遍だなって思って。すごい大事なことで。あんな昔観たものが今観ても古さを感じなくて一本一本観ても全然飽きないし、それでいて何か時代を感じちゃうよねっていうのがないのが『探偵物語』だったんですけど。

松田 一時期流行った、頭にタオルを巻くっていう。あれも実は優作から始まったファッションなんですね。

武 やってましたやってました。

松田 タオルを頭に巻くっていう土方の人達がやってるファッションを映像に取り入れたのは優作なんですよ。例えばそうやって何気ないことでも。

武 そうやって演じるだけじゃなくて映画の世界観を構築してる感じがして、そこへの責任とか表現者としての意志みたいなものを感じてしまうことがあって。

松田 新井君は俳優としていわゆる先輩達から得るものっていうものはどういうことがある?

新井 うちが常日頃から考えてるのは、例えば優作さんとか勝さんとか、芳雄さんも亡くなっちゃったけど、やっぱり亡くなった人ってどうしようもできないじゃないですか。見ることはできても一緒に関われないから。となると浅野忠信さんとか永瀬正敏さんとか今現役でやられてる先輩方を見てたくさん色々なことを思って。最近この仕事っていつ自分が消えるかわからないって常日頃から考えていて、年取ってもやりたいなって思っていて、じゃあその時に年取って年齢重ねてる俳優さんがなんでこうやれてるのかって見た時に、うちなりに一個思ったのは言葉使いっていうのがあって。先輩の西田敏行さんとか石橋蓮司さんとか柄本明さんとか若い言葉、今の言葉も使えるし、昔の言葉も使えるのはすごいなって思って、そういうのは先輩から得たりしますね。でも今美由紀さんがおっしゃった根本的な物作りに関しては、言ってることがすごい納得できるので即座に実践したいです。

松田 時代っていうのはいつもこう何かを壊していくものなんですよね。そうやって例えば新井君達の世代もそうですけど、壊していく、そういう熱があるものが、いや、クールクールにしようぜっていう。別にそんなの必死になるのとかマジ嫌だし、みたいなことがどんどん起きてきたんですよね。これがもっともっといくと思うんですよ。でもある時に時代っていうのはまた戻るわけですよ。だからこれから今の中学生とか小学生とかもっと小さい子達かもしれない、その子達がめっちゃめちゃ熱いことがかっこいいってことに必ず私はなってくると思うんですよね。そういう今緩いことがずっと、うちの龍平とかもみんな緩いですよね(笑)その緩さがまたぐわあって上がってくる。その時にダサい大人にはならないようにっていう。

新井 わ、わかりました。

武 新井君は大丈夫だと思いますよ(笑)

松田 でも私はすごくそれを思うんですよね。時代っていうのはすごくまわっていってるっていうね。今回の特集上映で、優作を伝説にしてしまうのはもったいないっていうことで、優作がなぜ存在してるかっていうスピリッツを映画の中から何か感じてもらえたらすごく嬉しいです。まだまだ面白い、いつもいつも同じキャラクターでなく、色々な役に変わるのが松田優作なんでぜひ楽しんで帰ってほしいです。

10.25(土)テアトル新宿にて

構成:直井卓俊(SPOTTED PRODUCTIONS)/編集協力:浜崎純/SPECIAL THANKS:オフィス作、アノレ、東映ビデオ